代表N値の決め方

代表 N 値(設計用採用値)の決め方 ― 要点を整理して書き直しました

1.代表 N 値が必要になる場面

  • SPT (N値) は土層ごとの強さや剛性を推定する最も一般的な原位置試験データ。
  • 地盤定数(せん断強度、弾性係数など)に換算する際、「その層を代表する N 値」をまず決める必要がある。
  • ボーリング 1 本でも打撃数に相当のばらつきがあるため、単純平均をそのまま採用すると“やや高め”に評価されることがある。 (出典

2.実務で広く使われている式

\[ N_{\text{rep}} = \bar{N} - \frac{\sigma_N}{2} \]

  • \(\bar{N}\):同一層で得た N 値の算術平均
  • \(\sigma_N\):標準偏差
  • 平均から標準偏差の 1/2 を引くことで、ばらつきを考慮しつつ安全側(低め)に調整する経験式。

3.この式の出典と位置づけ

出典記載内容・趣旨備考
土質工学会編「土質データのばらつきと設計」(1988) 「測定値のばらつきが大きい場合,設計用採用値は平均値±½σとする」 教科書的に引用される一次資料
基礎工 Vol.37, No.4 (2009) 道路橋基礎設計で同式を推奨;ばらつき大きい場合は技術者判断を要す 記載あり
土と基礎 Vol.34, No.12 (1986) ±½σ を紹介。N 値だけでなく強度試験結果にも適用可能 コメント欄でも言及
建築基礎構造設計規準・同解説 (技報堂, 1974) 「ばらつきが甚だしい場合は平均±½σで安全側を選ぶ」と記載 建築分野での初期記載
ポイント:
・あくまで経験的な安全側評価であり、統計的な厳密性より「実務的な保守率」として使われてきた。
・½ の係数に理論的根拠は薄く、「多数の既往設計で妥当だった」経験則という位置づけ。

4.適用手順(推奨フロー)

  1. 同一土質層を区分:標高・試験深度ごとに層区分を明確化。
  2. 外れ値の整理:Rock core 挟入やミスを除外。外れ値は ±3σ や箱ひげ図で判断。
  3. 平均と標準偏差の算出:標準偏差は原則 n−1(不偏分散)を用いる。
  4. 代表 N 値の算定:上式で計算し、安全側に丸める。
  5. ばらつきが極端に大きい場合:σ/μ > 0.5 程度を目安に、技術者判断や追加試験を行う。

5.よくある質問(FAQ)

QA
なぜ「½σ」なのか? 経験則に基づいた安全率設定。信頼性設計の「1−kσ」(k≈0.5) に近い考え方。
σ は n 法? n−1 法? n−1法(不偏分散)が推奨。社内ルールに従う。
N 値が 1 本しか無い場合は? σ=0となるため平均=代表値。保守的に -3 など低減値を設定することも。
SPT 以外にも使える? 基本的に同様に適用可能。ただし対数正規分布の物性値には注意。

6.まとめ

  • 「平均 − ½σ」方式は、長年にわたって用いられてきた実務的な保守係数。
  • ばらつきが小さければ平均値と近く、ばらつきが大きければ自動的に安全側へ寄る。
  • 外れ値や極端なばらつきには、追加調査・検討が必要。

参考文献

  1. 土質工学会編「土質データのばらつきと設計」(1988)
  2. 松尾稔・上野誠「土と基礎」Vol.34, No.12 (1986)
  3. 基礎工 Vol.37, No.4 (2009)「道路橋基礎設計に用いる地盤物性値の評価」
  4. 技報堂出版「建築基礎構造設計規準・同解説」(1974)

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