砂防基盤図について

砂防基盤図の実務ガイド|DMコード・ブレークライン/TIN・品質チェック・範囲設定・アプリ

砂防基盤図の実務ガイド

— DMコードの全体像、ブレークライン/TIN、品質チェック、図化範囲の決め方、活用アプリまで。

砂防基盤図について

砂防基盤図(Sabo Foundation Map)は、土砂災害防止法の基礎調査および(特別)警戒区域の公示に用いる数値地図の雛形仕様(JPGIS整合)に基づいて作成する、実務向けのベースマップです。応用スキーマでは、水部・水部の構造物・構囲/法面・地形(等高線/変形地)・植生・基準点・数値地形モデル(TIN/ブレークライン/補助標高点)などのパッケージで体系化されます。ここではDMコードの全体像ブレークライン/TIN品質チェックを実務寄りに詳述します。

参考仕様(プレビュー)
下のプレビューは、公共測量標準図式(DMコードの解釈の拠り所)と、砂防基盤地図 製品仕様書(案)(SFF)です。PDFを直接表示できない環境では、右上の「別タブで開く」から閲覧してください。
公共測量標準図式(DMコードの根拠) PDFを別タブで開く
砂防基盤地図 製品仕様書(案) 第1.2版(SFF) PDFを別タブで開く

DMコードの概要(上位2桁グループ)

実務で扱いやすいよう、番台(上位2桁)単位で大枠を整理します。細目(下2桁)は発注仕様や図式表で参照してください。

番台(例)カテゴリ代表例・用途メモ
11xx境界都道府県界、市区町村界、字界などの所属界
22xx, 23xx, 25xx交通施設道路施設(側溝・横断歩道橋等)、鉄道、線形管理
30xx, 34xx, 35xx建物・付属・記号建物、プール等の付属物、官公署・病院などの記号
41xx, 42xx小物体電柱、マンホール、鳥居、記念碑など
51xx水部河川・湖池・海岸線など、水域・水面の区分
52xx水部の構造物護岸、水制、床固、根固、せき、水門、堤防・ダム等
61xx構囲・法面・被覆人工斜面、被覆(コンクリート/ブロック/石積み)、法面保護、さく・へい
62xx諸地・場地空地、駐車場、材料置場、太陽光設備 など
63xx植生・地表広葉樹林、針葉樹林、湿地、砂礫地 等
65xx用地境界標、送配電線路、通信線路 等
70xx〜72xx地形・等高線・変形地等高線(計/主/補助/特殊補助)、凹地、崩壊地・急崖・露岩 など
73xx基準点三角点、水準点、電子基準点、標高点 等
75xx数値地形モデルランダムポイント(75-11)ブレークライン(75-21)TIN(75-31) など
76xx基準点網図与点記号、新点記号、水準路線 等
78xx,79xx空中写真・整飾標定点・撮影主点、図枠・凡例・タイトル等
81xx,82xx注記・測量記録地名・路線名・標高注記、縮尺・地区名・作業機関名 等

代表細目(抜粋)

52xx:水部の構造物(例)
  • 防波堤、護岸(被覆/捨石/杭)、蛇籠、敷石/斜坂
  • 水制(不透過/透過/水面下)、根固、床固(陸部/水面下)
  • せき、水門、距離標、量水標 など
75xx:数値地形モデル(例)
  • 75-11:ランダムポイント(補助標高点)
  • 75-21:ブレークライン(傾斜変換線/尾根/谷/人工縁)
  • 75-31:TIN(三角網地形モデル)

ブレークライン(Breakline)

  • 役割:TIN を幾何制約で補強し、地形の不連続・エッジ(堤体天端/法尻、河岸・段丘縁、擁壁上端/下端 等)を忠実化。
  • 分類の例:自然(尾根・谷・崖縁)/人工(法肩・法尻・構造物縁)。属性に type(ridge/valley/slope_edge/struct_edge 等)、role(hard/soft)を持たせると QC が安定。
  • 作図の原則
    • 3D 必須(各頂点に Z)。
    • 法面・堤体などは上端(肩)・下端(尻)を別線で取得し、TIN の強制辺に設定。
    • 河川では低水路/高水敷の縁や低位水際を優先し、等高線の局所逆勾配を抑制。

ランダムポイント(補助標高点)

  • 配置の考え方:平坦地の広域、樹木下、建物周辺、法面中腹など、標高補間が不安な場所に計画密度で配置。
  • 属性の例z_src(取得源:測量/DEM/写真測量)、dateacc(推定精度)。

TIN(不規則三角網地形モデル)

  • 作成フロー:①等高線から初期 TIN → ②ブレークラインを強制辺で挿入 → ③ランダムポイントで面調整 → ④穴あき/自交差/凹凸の有無を検査。
  • 検査観点:三角形の面積閾値(極小三角の排除)、長細比(アスペクト比)、Z の外れ値(尖塔/ピット)。

定量的品質評価(受入検査)の手順

  1. 完全性:図化漏れ・過剰の有無(ブレークライン/ランダム点/等高線/植生界 等)。TIN の穴あき・異常要素の有無。
  2. 論理一貫性:3D 必須項目の座標記録、トポロジ(節点での接続、重複線なし、TIN 三頂点の同一点なし等)の機械検査。エラー検出時は不合格。
  3. 位置正確度
    • 相対(内部):地物同士の整合(河川と河岸、堤体と法面 等)。断面/鳥瞰で目視確認。
    • 絶対(外部):指定の代表点で標高誤差統計(例:標準偏差 ≤ 0.66 m など)。※数値基準は発注仕様に従う。
QCメモ:検査前に「CRS(平面直角○系)」の設定確認→ブレークラインの属性欠損→TIN 異常(極小三角/自交差/尖塔)→注記の重なり、の順で潰すと早いです。

作成する範囲の例(図化範囲の決め方)

図化範囲は、最終的に(特別)警戒区域を包含することを前提に、監督員と協議して設計します。全国の運用は大きく 2 系統です。

  • 全面方式:危険箇所を含む 1/2,500 図郭を全面図化。
  • 周辺方式:危険箇所の周囲だけを一律ルールで図化(例:土石流=流域+50m、基準地点下流 200m/急傾斜=周囲 100m/地すべり=周囲 50m+下方 200m)。

砂防(特に土石流)の具体的な留意点

  • 既往資料の活用:危険渓流カルテ等の危険区域を参照し、大縮尺の既往地形図で検討。
  • 上流側の余裕:想定基準地点より上流に水平 200m 以上の余裕(ただし流域界まで)。
  • 複数の基準地点:全て対象に含める。
  • 平坦地の横広がり:想定流下方向を複数設定し、各方向で分散角 30°を確保して余裕を持って図化。
  • 末端側の基準地盤勾配 2°未満となる地点を目安に、そこから下流側へ余裕を取る。
  • 到達不能域:比高差の大きい山地や、極端に広い河川など、明らかに到達しない土地は除外を検討。

QGISでの実務フロー(例)

  1. 基礎データ準備:最新DEM(5A/5B 等)、既往危険渓流カルテ、多年次 ortho を読み込み。
  2. 基準地点の暫定設定:カルテや現地条件から想定基準地点を点で作成(複数可)。
  3. 上流 200m の確保:流下線(中心線)を引き、distance along lineで上流方向に 200m 余裕を取る(流域界を超えない)。
  4. 横方向 30° の確保:中心線の各セグメント方位を基に、geometry generatorやプラグインで扇形(±15°)のセクタを作成して結合。
  5. 末端 2° の決定:中心線沿いに 200m 毎の測点を生成→200m 先との標高差/水平距離から勾配(°)を求め、2°未満になる最初の点を抽出→そこから下流に余裕を延伸。
  6. 除外条件の適用:大河川の本川や高い比高差の分水界など、明らかに到達不能な領域をマスク。
  7. 範囲ポリゴンの生成:上記の上流・横方向・末端条件をunionし、最終範囲をトポロジ修正。
  8. 監督員協議:想定警戒区域が必ず包含されていることを確認し、合意を得る。

※作業は案件条件により調整。自動化する場合はモデルビルダー/Graphical Modeler や PyQGIS を併用。

アプリ(閲覧・検査・3D/TIN・変換)

コア(無料・公式/定番)

  • 公共測量成果検査支援ツール(PSEA)
    DM/SXF の表示・簡易検査・フォーマット変換構造エラー・属性欠損・3D必須項目の検査ができ、一次受入に最適。CSV レポートで差し戻し指摘が作りやすい。
  • SXFブラウザ(JACIC)
    SXF(.p21/.sfc)の表示・印刷確認。閲覧専用として軽快。

GIS/ビューア(DMの属性確認・3D/TIN)

  • QGIS(無料)
    JPGIS/GML/Shape の属性表で DM コードを確認し、番台/細目で分類スタイルGeometry by expressionで扇形(30°)や 2° 末端の可視化も可能。
  • SIS(商用)
    変換なしで多形式を直接読込。CRS ハンドリングとスタイル管理が強く、DM の運用に向く。
  • ジオコーチ
    TIN 生成・3D 表示でブレークラインの効きを鳥瞰で即確認。極小三角・自交差検出の目視に◎。
  • DM-ViewConFree
    DM/拡張DM/SIMA-DM/SXF の軽量ビューア。DM→SXF 変換が速いので「配布データを CAD/GIS に載せ替え」る中継にも。

変換・連携(大量処理/CAD⇄GIS)

  • FME(商用)
    SXF→GeoPackage/FGDB などへ属性保持で一括変換。夜間バッチや監視実行に。
  • iJCAD(DWG 互換)
    _SXFIN/_SXFOUT で SXF 入出力。CAD 側のレイヤ/線種と DM の属性を対比しやすい。

おすすめ構成(現場フロー)

  1. PSEA表示+エラーチェック(エラーレポート出力)。
  2. QGIS/SISDM コード分類・凡例整備(番台→細目→注記ラベル)。
  3. ジオコーチTIN/3D 目視(穴あき/凹凸/自交差)。
  4. 必要に応じてDM-ViewConFreeDM→SXFFMEで大量一括変換。

つまずきポイントと対策

  • 座標ズレ:平面直角座標系(JGD2000/2011)の系番号不一致 → まず CRS を明示。
  • ラベル衝突:注記が密集 → label priority/obstacle設定、重要注記を別レイヤで。
  • TIN 異常:極小三角/尖塔 → ブレークラインの欠落・Z 外れ値を疑う。必要ならランダム点を補強。

FME 深掘り(設計・自動化・QC)

FME は Safe Software のローコード ETL。GIS/CAD/DB/表計算など多数形式の 読込→変換→書出 を GUI で組めます。砂防・DM 業務では「大量変換」「属性整理」「QC 自動化」「納品形式統一」に強み。

構成

  • FME Form:デスクトップでワークスペース(処理フロー)を作成。Workbench で組み、Data Inspector で結果確認。
  • FME Flow / Flow Hosted:スケジュール、フォルダ監視、Webhook などで自動実行。

よく使う Reader/Writer(砂防まわり)

  • OGC GML(JPGIS) / Shapefile / GeoPackage(推奨:最終は GPKG で統合)
  • DXF/DWG(CAD 中継)/CSV(属性表の受け渡し)
  • PostGIS/SpatiaLite(DB 連携)

注意:日本の JACIC SXF(.sfc/.p21) は FME の標準 Reader にありません。DM-ViewConFree / PSEA 等で SHP/GML/DXF に変換してから FME に渡すのが実務的です。

代表トランスフォーマ(目的別)

座標・属性
  • CoordinateSystemSetter / Reprojector:CRS 設定と再投影(JGD2011 等)。
  • AttributeManager / AttributeCreator:項目の作成・改名・型変換。
  • Tester / AttributeFilter:条件分岐(例:DM>=5200 AND DM<5300)。
  • StatisticsCalculator:標高誤差等の統計(平均/分散/StdDev)。
幾何・結線・QC
  • GeometryValidator:自己交差・重複頂点・空ジオメトリ検査。
  • Planarizer / Dissolver / LineMerger:ノード化・面生成・線の統合。
  • Snapper / Generalizer:スナップ補正・簡略化。
  • NeighborFinder / DuplicateFilter:近接・重複検知。
3D/TIN・地形
  • TINGenerator / DelaunayTriangulator:ブレークライン+点群から TIN。
  • 3DForcer:Z の付与(2D→3D)。
  • SurfaceSampler / PointOnSurfaceOverlayer:断面・標高サンプリング。
書出・配布
  • FeatureWriter:処理途中での書出(分割保存・ファンアウト)。
  • Fanout(by 属性):番台/図郭ごとに自動分割出力。

設計パターン(テンプレ)

  1. JPGIS GML → GeoPackage 統合
    Reader:GML → CoordinateSystemSetter/ReprojectorAttributeManager(DM 正規化) → Tester(番台別分岐) → Writer:GPKG(レイヤ分け)。
  2. DM QC パイプライン
    Reader:Shape/GML → GeometryValidator(自己交差/空) → Planarizer(ノード化) → Snapper(閾値=0.2m など) → StatisticsCalculator(誤差集計) → レポート出力(CSV)。
  3. ブレークライン+ランダム点 → TIN → 断面抽出
    Reader:Lines/Points → TINGenerator(ブレークラインを強制辺) → SurfaceSampler(流下線/横断線に沿って標高取得) → Writer:CSV/GPKG。

自動化(Flow)

  • スケジュール:夜間に一括変換・QC。
  • フォルダ監視:新規ファイル投入をトリガにワークスペース起動。
  • Webhook/API:社内ツールからパラメータ付き実行(例:図郭名・番台)。
  • 通知:完了/失敗をメールや Teams に送信。

性能チューニングの勘所

  • Feature Caching:開発時のみ ON。本番は OFF。
  • 並列化:一部トランスフォーマは Parallel Processing 可。I/O は SSD に。
  • ファンアウト:番台・図郭単位に分割処理でメモリ負荷を下げる。
  • エンコーディング:Shapefile 等は Shift_JIS/UTF-8 の明示を徹底(文字化け対策)。

よくあるハマり

  • CRS 未定義CoordinateSystemSetter で定義→Reprojector で統一。
  • SXF が読めない:JACIC SXF は未対応。DM-ViewConFree/PSEAで SHP/GML/DXF に変換してから投入。
  • TIN が荒れる:ブレークライン不足/属性欠損。ブレークラインの上下端を別線で追加し、TINGenerator の強制辺に設定。

© 2025 砂防基盤図 実務メモ。この記事は公共資料の要点を実務向けに整理したもので、最新の発注仕様・製品仕様に従ってください。

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