現地調査向けGNSS選定
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山岳調査向けGNSS選定ガイド — 2周波/3周波・CLAS・外付け受信機・スマホ比較
谷筋や樹林下、通信圏外……。現場で“迷わない位置取り”のために、2周波/3周波・QZSS‑CLAS・端末別の違いと、スマホ連携の実務をまとめました。
TL;DR(結論)
通信が入る&コスト優先でcm級:2周波RTKNtrip → mapry R‑ONE が合理的(本体+月額+Ntrip)。
圏外でもcm級/Fixの粘り最優先:3周波QZSS‑CLAS(L6) → LRTK Phone(CLAS対応モデル) が有利。
踏査(1–3mで十分):スマホ単体でもOK。確実にL5を使いたいなら iPhone 16 Pro系。
※スマホ単体で CLAS(L6) の復調はできません。外付け受信機が前提。
※スマホ単体で CLAS(L6) の復調はできません。外付け受信機が前提。
GNSSの基礎|2周波と3周波の違い
GNSSは GPS / GLONASS / Galileo / BeiDou / QZSS(みちびき)などの総称。衛星からの搬送波 L1/L2/L5/L6 を複数同時に受信すると、電離層補正の自由度が増し、整数アンビギュイティ解決(Fix)が速く頑健になります。
2周波(例:L1+L2/E5)
- 通信ありの ネットワークRTK で cm級 が現実的
- コストと運用の軽さで有利
3周波(例:L1+L2+L5)
- 初期Fixが速く、遮蔽やマルチパスで粘る
- CLAS(L6) と相性がよく、圏外でも高精度の選択肢
Qiita記事(2018)の要約と2025年のアップデート
出典:「GPS測位の種類とか予備知識」(Qiita, 2018-08) は最終更新から年数が経っています。要点を要約し、現状に合わせてアップデートしました。
記事の要約(当時の記述)
- 周波数:
L1/L2/L5/L6を紹介。L6(みちびき)は「cm級補強」だが専用機で高価と記載。 - 測位方式:Single(単独測位)/DGPS/RTK/PPPを概説。一般利用はRTKが現実的との結論。
- RTKのFix時間:L1+L2は約1分、L1のみは最大10分程度かかる場合があると記載。
- 当時の低価格機:u‑bloxベース(M8Pなど)やトラ技RTKキットを例示。
いま見直すポイント(2025年の状況)
- CLAS(QZSS L6D)は実運用が定着:電波は無料。CLAS対応受信機があれば圏外でもcm級が狙える。専用機はかつてより大幅に低価格化。
- 2周波は標準化、3周波の普及:ZED‑F9P系などのL1/L2受信機が一般化し、3周波機も増加。Fixの初期収束が高速・頑健に。
- マルチGNSS前提:GPSに加えてGLONASS/Galileo/BeiDou/QZSSを束ねるのが一般的。山間・樹林下での冗長度が向上。
- PPP系の選択肢:衛星配信のMADOCA‑PPP(L6E)や民間PPP‑RTKが整備。現場要件によってはRTK以外も実用。
- DGPSは縮小:SBAS(MSAS)やRTK/PPP‑RTKに置き換えが進み、用途は限定的。
- スマホ事情:L5対応スマホが増えたが、CLAS(L6)の復調はスマホ単体不可。外付け受信機で位置データを取り込むのが実務。
GPS測位の種類と課題(検証&2025アップデート)
電波の種類(用語の整理)
- L1/L2/L5:GPSの測位用周波。近年はL1+L5の民生機(スマホ含む)が普及。
- L3:GPSの測位用ではなく、核爆発検知システムのデータ伝送。
- L4:電離層補正の研究用として検討された帯域。広域運用はされていない。
- L6:GPSではなくQZSS(みちびき)の帯域。ここでCLAS(センチ級補強)が放送される。対応受信機が必要。
測位方式の現在地
- 単独測位(Single):数m級。SBAS(MSAS等)で精度・信頼性が向上。
- DGPS:歴史的方式。現在はSBASやRTK/PPPが主流で用途は限定的。
- RTK:2周波(L1+L2/E5)が標準。単周波RTKは短基線(〜1–2km目安)向け。デュアル周波RTKは単独基線でも〜20km目安、ネットワークRTKなら広域で安定運用。
- PPP/PPP‑AR:かつては10–30分の収束が一般的だったが、PPP‑AR(PPPの整数化)や地域補強の発達で収束短縮が進む。
- PPP‑RTK/CLAS:QZSSのL6Dで補正を衛星放送。通信圏外でもcm級が狙える。さらにMADOCA‑PPP(L6E)という衛星PPPも整備。
コストの見直し
- かつて高価だった2周波受信機は大幅に低価格化。
- CLAS対応機も普及し、「実験用で超高額」という状況ではない。
有効範囲の考え方
- 単周波RTK:短基線(〜1–2km)で安定運用が現実的。
- デュアル周波RTK:〜20km程度が一般的な目安。ネットワークRTKなら広域でも安定。
- 環境(電離層状態・地形・通信品質)で実力は変動するため、現場での冗長設計が重要。
「CLAS対応」とは?(QZSS L6|センチメータ級補強)
CLAS=Centimeter Level Augmentation Service。みちびき(QZSS)が L6D 信号で配信する PPP‑RTK型(SSR)補正 を、対応受信機が衛星から直接受け取り解読し、測位に適用します。
- 必要:L6を受信できるRF/アンテナ + CLASデコーダ内蔵の 対応受信機(スマホ単体は不可)
- 費用:電波は 無料(利用料なし)。機器のみ用意
- 対象:日本国内の地域サービス(L6EのMADOCA‑PPPは別サービス)
- 特性:通信圏外でも高精度可。ただし 初期収束に数分かかる場合あり
製品比較:LRTK Phone vs mapry R‑ONE
| 観点 | LRTK Phone | R‑ONE(mapry) |
|---|---|---|
| 周波数 | 3周波(L1/L2/L5) | 2周波 |
| 補正 | CLAS(L6)対応モデル+ネットワークRTK | ネットワークRTK(Ntrip)前提 |
| 圏外運用 | 可(CLAS衛星補強) | 不可(通信必須) |
| 想定精度 | 条件が整えば cm級 | 通信確保で cm級 |
| 用途 | AR杭打ち誘導/出来形ヒートマップ/点群スキャン→クラウド | 境界・立木測位、LiDAR併用で位置付与、低コストでcm級 |
| 費用感 | 要問合せ | 本体95,000円(税抜)+アプリ月額+Ntrip |
参考:LRTK Phone|https://www.lrtk.lefixea.com/lrtk-phone / mapry R‑ONE|https://service.mapry.co.jp/r-one
スマホ内蔵GNSSの実力と注意点
重要:スマホ単体で CLAS(L6) の復調はできません。cm〜dm級は 外付け受信機が前提。
| 端末 | 公式の位置情報仕様 | 2周波の明記 | 実用所感 |
|---|---|---|---|
| iPhone 16(無印) | GPS / GLONASS / Galileo / QZSS / BeiDou | なし(=実務上は単周波扱い) | 多星座で良好。確実なL5運用は Pro系推奨 |
| iPhone 16 Pro/Max | 上記に加え Precision dual‑frequency GPS(L1+L5) | あり | 樹林下・谷筋でFixが安定しやすい |
| Galaxy A23 5G | GPS / GLONASS / Galileo / BeiDou(レビュー実測) | 公称なし(SoCはL1+L5対応だが端末実装は非明記) | 屋外で概ね ±3m。厳所は冗長観測推奨 |
外付けGNSS × スマホ連携(置き換えの仕組み)
共通の考え方
- スマホは 衛星の生電波 は読まない
- 外付け受信機が測位 → NMEA等の位置データをスマホへ
- CLAS/RTKの補正・Fixは 受信機側で完結
接続手段
- Bluetooth(SPP/BLE):最も一般的
- USB‑OTG(Android):シリアル/NMEAを直接
- Wi‑Fi(TCP/UDP):ソケット配信を受信
AndroidでOS位置に置き換え
- 受信機を Bluetoothペアリング
- 開発者向けオプションで モック位置アプリ を指定
- アプリでNMEAを受信 → システム位置を外付け座標に置換
iOSの取り込み
- MFi対応受信機:Core Locationに統合(全アプリで外付け位置)
- 非MFi BLE機:OS全体置換は不可。ベンダーSDK/専用アプリ内で利用
FAQ|外部アンテナをBluetoothで置き換えられる?
いいえ。アンテナ単体は 電波(RF) を拾うだけでデータを出しません。必要なのは GNSS受信機(アンテナ+GNSSチップ) です。Bluetoothで渡せるのは 測位結果(NMEAなど) です。
いいえ。アンテナ単体は 電波(RF) を拾うだけでデータを出しません。必要なのは GNSS受信機(アンテナ+GNSSチップ) です。Bluetoothで渡せるのは 測位結果(NMEAなど) です。
用途別のおすすめ
- 踏査(1–3mで十分):スマホ単体。ログは 静止+往復 で冗長化。iPhone 16 Pro系はL5でよりロバスト
- 出来形・杭打ち(cm級/通信あり):R‑ONE(2周波+Ntrip)。三脚+ポール+安定通信
- 谷筋・樹林下・圏外(cm級):LRTK Phone(3周波+CLAS対応)。衛星補強で通信レス運用が可能
導入チェックリスト
- 必要精度:m / dm / cm
- 通信:常時あり / 断続 / 圏外
- 地形・植生:谷筋 / 樹冠率
- 点数・作業フロー:杭打ち誘導 / 点群 / 出来形
- 予算:初期(本体・アクセサリ)+月額(アプリ・Ntrip)
- 連携:QGIS/ArcGIS での入出力(GeoJSON/CSV/LAZ)
参考リンク(一次情報)
- LRTK Phone|公式
- mapry R‑ONE|公式
- iPhone 16|技術仕様 / iPhone 16 Pro|技術仕様(Dual‑frequency明記)
- QZSS|CLAS(L6D)概要
- Samsung Galaxy A23 5G|実測レビュー
- Qiita|GPS測位の種類とか予備知識(2018)
※ 仕様は機種/地域で変わる場合があります。正確性が重要な業務では、各メーカーの最新版ドキュメントをご確認ください。
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