WEB地図(国土地理院など)のズームレベルについて

WEB MAP / TILE GUIDE — 2026.09 UPDATE

Web地図の「ズームレベル」を実務で理解する

Google Maps、地理院地図、OpenStreetMap、QGISのXYZタイルなどで出てくる ズームレベル(ZL)。数字が1増えると何が変わるのか、 「ZL18=1/2,000」のような縮尺換算は本当に正しいのか、 QGISで拡大しても地図の細かさが増えないのはなぜか——を実務向けに整理します。

2026年9月向けの大きな修正点: Web地図のズームレベルには固定された縮尺はありません。 緯度、画面のピクセル密度、タイルサイズ、表示ソフトで縮尺が変わります。 そのため旧版の「ZL12=1:250,000、ZL20=1:1,000」のような一対一対応表はやめ、 m/px(地上解像度)を中心に整理しました。

1.ズームレベルとは?

多くのWeb地図では、世界全体を正方形のタイルに分割し、 ズームレベルが1つ上がるたびに縦横を2倍、つまりタイル数を4倍にします。 ZL0では世界全体が1枚、ZL1では2×2枚、ZL2では4×4枚……という仕組みです。

ZLが1増える 1ピクセルが表す地上距離はおおむね1/2になります。
タイル数 1辺は 2^Z 枚。世界全体では 4^Z 枚になります。
一般的な方式 Google Mapsや地理院タイルは、256×256pxを基本とするWeb Mercator系のタイル方式を使います。

ただし「ズームレベル」という概念自体が世界中で完全に同一規格というわけではありません。 256pxタイル、512pxタイル、ベクトルタイル、HiDPI表示などでは、 同じZLでも画面上の見え方が異なる場合があります。

2.解像度の計算式

256pxタイルのWeb Mercatorを前提とした代表的な式です。

解像度 [m/px] = 156543.0339 × cos(緯度) ÷ 2Z

同じ意味を地球半径から書くと次のようになります。

解像度 [m/px] = cos φ × 2π × 6,378,137 ÷ (256 × 2Z)
  • φ:緯度
  • Z:ズームレベル
  • 6,378,137 m:Web Mercatorで用いる半径相当値
  • 256 px:標準的なタイル1辺のピクセル数
重要: 緯度が高くなるほど cos(緯度) が小さくなるため、 同じZLでも日本と赤道では1pxが表す地上距離が違います。

3.日本・北緯36°付近のZL早見表

下表は北緯36°、256pxタイルで計算した値です。 「縮尺」は96 CSS px/inchで画面表示した場合の参考値であり、 地図そのものに固定された縮尺ではありません。

ZL 地上解像度
北緯36°
参考縮尺
96px/in換算
世界全体のタイル数
1辺
ZL 1230.919 m/px約 1:117,0004,096 × 4,096
ZL 1315.460 m/px約 1:58,0008,192 × 8,192
ZL 147.730 m/px約 1:29,00016,384 × 16,384
ZL 153.865 m/px約 1:15,00032,768 × 32,768
ZL 161.932 m/px約 1:7,30065,536 × 65,536
ZL 170.966 m/px約 1:3,700131,072 × 131,072
ZL 180.483 m/px約 1:1,800262,144 × 262,144
ZL 190.242 m/px約 1:913524,288 × 524,288
ZL 200.121 m/px約 1:4561,048,576 × 1,048,576
ZL 210.060 m/px約 1:2282,097,152 × 2,097,152
ZL 220.030 m/px約 1:1144,194,304 × 4,194,304
例えば北緯36°では、ZL18 ≒ 0.48m/px、 ZL19 ≒ 0.24m/pxです。 ZLが1つ増えるたび、数値がきれいに半分になります。

4.「ZL18までの地図」をZL21で見たら細かくなる?

なりません。 ここはQGISで特に重要です。

タイル配信側がZL18までしか持っていない場合、ビューアによってはZL19、20、21まで拡大して表示できます。 しかし、その場合はZL18の画像を引き伸ばしているだけ(overzoom)です。 建物の輪郭や道路線が新しく細かくなるわけではありません。

地理院「標準地図」の配信上限はZL18です。 QGIS上でそれ以上にズームできても、標準地図の元画像にZL19やZL20の新しい情報が増えるわけではありません。 地理院タイルは種類ごとに提供ZLが異なるため、必ず「地理院タイル一覧」を確認します。

ラスタタイルとベクトルタイルでは少し違う

  • ラスタタイル:最大ZLを超えると基本的には画像の拡大。解像度は増えない。
  • ベクトルタイル:線や文字自体は再描画できるため見た目は滑らか。ただし、元データの地物量やスタイルの表示条件はZL依存。
  • ベクトルタイルでは、スタイル側にminZoom / maxZoomが設定され、あるZLを超えると地物が消えることもある。

5.QGISの「縮尺」とZLは別物

QGIS画面左下に表示される 1:2,500、1:5,000などは地図縮尺です。 XYZタイルの ZL18、ZL19とは別の概念です。

印刷に必要な画像解像度 [m/px] ≒ 縮尺分母 × 0.0254 ÷ 出力DPI
レイアウト縮尺300dpi出力で必要な地上解像度ZL18(北緯36° 約0.48m/px)との比較
1:2,500約0.212 m/pxZL18を拡大して使う状態。元画像の細部は増えない。
1:5,000約0.423 m/pxZL18の約0.48m/pxとかなり近い。
1:10,000約0.847 m/pxZL18で十分な画素密度を持つ。

これは「1:2,500では地理院標準地図が使えない」という意味ではありません。 PDFを300dpiで出しても、背景ラスタの情報量自体はZL18以上には増えないという意味です。 ベクトルデータや自分で作成した線・文字は、PDF出力時に別途高精細に描画できます。

6.地理院地図は2026年度にZL12~14の表現を更新予定

国土地理院は2026年度第2四半期に、中・小縮尺タイルのリニューアルを予定しています。 予告内容では、ZL14に電子地形図50,000の表現、 ZL12~13に電子地形図20万の表現を適用し、 ZL9~11も一部の描画を見直すとされています。

つまり同じ「ZL14」でも、2026年の更新前後で何を描くか・どこまで情報を出すかが変わる可能性があります。 ZLは「画面倍率」だけではなく、地図側の描画ルールの切替キーとしても使われています。

7.URLのどこにZLがある?

Google Maps

Google Mapsの共有・閲覧URLでは、次のように座標の後ろに 11z のような表記が現れることがあります。

https://www.google.com/maps/@36.5844,136.6651,11z

※Google MapsのURL形式は内部仕様として変更されることがあります。 アプリ開発ではURL文字列の解析より、Google Maps APIのzoom値を使う方が安全です。

地理院タイル

XYZタイルのURLは原則として次の形です。

https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/{データID}/{z}/{x}/{y}.png

ここで z がズームレベル、 x と y がタイル座標です。

地理院地図の画面URL

地理院地図では、URLの #ZL/緯度/経度 部分で表示位置を表す形式が使われます。

8.ZLからタイルX/Yを求める仕組み

タイルは左上(北西)を原点として、 Xは東方向、Yは南方向に増えます。

  • ZL0:1 × 1
  • ZL1:2 × 2
  • ZL10:1,024 × 1,024
  • ZL18:262,144 × 262,144
  • ZL20:1,048,576 × 1,048,576

そのためXYZタイルのURLが分かれば、同じZLの隣接タイルを計算したり、 QGIS・Pythonで必要範囲だけ一括取得することもできます。

9.EPSG:4326とEPSG:3857を混同しない

CRS何を表す?単位主な用途
EPSG:4326 WGS 84の経緯度 度 緯度・経度の受け渡し、GNSS位置情報、GeoJSON等
EPSG:3857 WGS 84 / Pseudo-Mercator m Web地図表示、XYZタイル
EPSG:3857の座標単位はmですが、そのまま「現地の正確な距離・面積」になるわけではありません。 Web Mercatorは表示用の投影法です。 日本国内の距離・面積計算では、対象地域のJGD系平面直角座標系などを使う方が適切です。

10.256pxと512pxの罠

上の解像度式は256pxタイルを前提にしています。 一方、HiDPI・Retina向けや一部のベクトル地図では512pxを使うことがあります。

512px画像だから単純に「ZLが1つ上」と判断するのは危険です。 ライブラリ側が512pxを1タイルとして扱うのか、 256px相当を2倍解像度で配信しているのかで意味が変わります。

11.実務で覚えておくと便利な5項目

  1. ZLが1増える → m/pxは約半分。
  2. ZLと縮尺は1対1ではない。緯度・DPI・タイルサイズで変わる。
  3. 最大ZLを超えてズームしても元データの情報量は増えない。
  4. QGISの1:2,500とXYZのZL18は別概念。
  5. EPSG:3857はWeb表示向け。測量計算は地域に合った投影座標系を使う。
一番分かりやすい覚え方:
「ZLは縮尺そのものではなく、世界を何回2分割したかを表す番号」。 こう考えると、XYZタイルやQGISの挙動がかなり理解しやすくなります。

参考資料

※Web地図サービスの提供ZL、描画仕様、URL形式は変更される場合があります。 業務利用では各サービスの最新仕様と利用条件を確認してください。

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