ペットボトルキャップ1000個で20円。……これ、本気でやってるの?送料はいくらですか?
キャップ1000個で20円。今日も世界を救う
エコキャップという「壮大な20円プロジェクト」を、善意ではなく電卓で見てみた
きっかけになった動画。YouTubeで直接見る場合は こちら。
職場、学校、役所、スーパー。今でもよく見る「ペットボトルキャップを集めて世界の子どもにワクチンを」という活動。
善意なのは分かる。リサイクルされるのも本当。ワクチン支援につながっているのも本当。
ただ、現在の数字を一度そのまま並べると、どうしても思ってしまう。
1.まず「1000個で20円」を図にするとこうなる
JCVが2026年に案内している現在の目安では、キャップ約500個で約1kg。回収リサイクル業者からJCVへの寄付額は全国平均で1kg当たり10円。ポリオワクチン1人分を20円として、2kg=約1,000個で1人分の支援になる。
集める。保管する。袋にまとめる。運ぶ。選別する。粉砕する。再生原料にする。
そしてワクチン支援としては、平均20円。
もちろん20円も大事である。
ただし20円玉なら――そもそも20円である。
2.100円を直接寄付する場合、キャップなら約5,000個
財布から100円。
約10kg集めて平均100円。
1,000円を寄付するなら、キャップ換算では約5万個。
社員100人の会社で一人10円ずつ出せば1,000円になる。
エコキャップなら約5万個である。
ワクチン支援だけを目的にするなら、どちらが楽かは、私でも分かる。
3.45Lの袋いっぱいに集めても、平均寄付額は約70円
JCVによると、45Lのゴミ袋いっぱいでキャップは約7kg。
全国平均10円/kgで単純計算すると、
そして数字にすると、約70円。
見た目の達成感については、70円玉より圧倒的に上である。
4.さらに立派な専用回収BOXもある
JCVが紹介している専用回収BOX「SEVEN GOALS」は55Lで、キャップ約2,800個が入る。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| BOX容量 | 55L |
| 収納できるキャップ | 約2,800個 |
| 重量換算 | 約5.6kg |
| 全国平均10円/kgでの寄付額目安 | 約56円 |
| JCV経由のBOX価格 | 12,700円+税・送料 |
この辺になると、ワクチン支援というより、
という意味もかなり大きそうに見える。
5.ではキャップは本当にリサイクルされていないのか
ここは動画側の言い方を修正した方がいい。
「キャップのリサイクルは全部ウソ」――これは現在の事実とは合わない。
PETボトル本体はPET樹脂だが、キャップは主にPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)。PETボトルリサイクル推進協議会もこの材質の違いを明記している。
そして、集められたキャップは回収リサイクル業者によってペレットなどの再生原料に加工され、買い物カゴ、洗剤・柔軟剤ボトル、うちわなどに利用されている。
つまり、本当に批判するなら、
「リサイクルされていない」ではなく、「ワクチン支援としてこの方法が効率的なのか」「回収・輸送まで含めて環境効果はどうなのか」
と問う方が正確である。
6.「リサイクル=無条件にエコ」でもない
リサイクルには、回収、輸送、選別、洗浄、粉砕、再加工などの工程がある。
環境省もプラスチックリサイクルを評価する際、原料調達から回収、処理、再製品化まで含めたライフサイクル全体で環境負荷を見るLCA(ライフサイクルアセスメント)が重要だとしている。
過去の環境省分析では、一定条件のもとで容器包装プラスチックをリサイクルする方が、焼却するケースよりCO2排出量が少ない結果も出ている。
なので、
| 言い方 | 評価 |
|---|---|
| 「キャップはリサイクルされていない」 | × 現在は不正確 |
| 「リサイクルなら必ず環境にいい」 | △ 条件次第 |
| 「回収・輸送まで含めて評価すべき」 | ○ その通り |
| 「ワクチン支援なら直接寄付の方が効率的では?」 | ○ かなり自然な疑問 |
7.宅配便で送ると、さらに味わい深くなる
JCVが掲載する回収業者の中には、「持ち込み、または送料送り主負担で郵送」というところもある。
仮にキャップ10kgを集めれば、全国平均でJCVへの寄付額は約100円。
その10kgを送料を払って送れば、条件によっては送料の方が何倍も高くなる。
ワクチン支援というより、日本の物流業界への支援としては非常に分かりやすい。
もちろん大量にまとめて回収したり、既存物流を利用したり、買い物のついでにスーパーへ持ち込む場合は話が変わる。
だから問題は「キャップ回収=悪」ではなく、どんな回収方法でも自動的にエコになるわけではないということだ。
8.そして過去には、本当に寄付されていなかった時期もあった
2015年には、NPO法人「エコキャップ推進協会」が、キャップ売却益から行っていたワクチン支援団体への寄付を2013年9月以降停止していたことが報道された。
協会側は、別に取り組んでいた障害者支援を強化したためと説明している。
9.実際に「これ、効率悪くない?」とやめた企業・団体もある
ここまで数字を見てくると、
「こんなことを今でも本当に続けているの?」
と思う人もいるかもしれない。
実際、やめた企業や自治体、社会福祉協議会はある。
しかも中には、かなりはっきり理由を書いているところもある。
株式会社サンプロ――「寄付に繋がる効率が非常に低い」ので終了
長野県の住宅会社・株式会社サンプロは、2025年7月31日でエコキャップ回収活動を終了した。
同社は終了理由として、
という実情を公式サイトで明記している。
さらに、限られた資源と労力を、より効果的な社会貢献や環境負荷低減につなげるべきだと判断したとしている。
2kg集めて、運んで、保管して、処理して、ワクチン1人分。
そして会社側が一度電卓を叩いた結果、
「もっと効率のいいことに資源と労力を使おう」となった。
ようやくキャップより先に、計算機を回収した会社である。
山形県三川町――買取価格低下+運送料増+通常のプラ回収があるので終了
山形県三川町は、2024年2月29日でペットボトルキャップの個別回収を終了した。
町が挙げた理由はかなり具体的で、
- キャップをプラスチック容器包装類としてリサイクルする仕組みができている
- キャップの買取価格が下がっている
- 輸送のための運送料が上がっている
- その結果、エコキャップ運動の継続が難しくなった
というもの。
わざわざキャップだけ別に集めて、安くなったキャップを、高くなった運賃で運ぶ。
町役場もさすがに「それ、もう普通にプラで出せばよくない?」となったようだ。
北海道苫小牧市――通常の再資源化ルートとCO2まで考えて2026年に終了
北海道苫小牧市も、2026年2月末でキャップの専用回収を終了した。
市は理由として、
- プラスチックごみとして出した場合の再資源化ルートが構築されたこと
- ゼロカーボンシティとして新たなCO2排出を抑えること
などを総合的に考えたとしている。
「CO2を減らすためのエコキャップ」を続けるより、
キャップ専用回収をやめた方が新たなCO2を抑えられると自治体が判断したわけだ。
エコ活動をやめる理由が、エコだった。
北海道苫小牧市「ペットボトルのキャップ回収 令和8年2月末をもって終了」
紀の川市社会福祉協議会――買取価格低下と運送料増で終了
和歌山県の紀の川市社会福祉協議会も、2024年9月30日でエコキャップ回収を終了した。
理由として、社会情勢の変化に加え、
- キャップの買取価格の減少
- 輸送のための運送料の増加
などから、活動継続が難しくなったとしている。
要するにここでも、
という、極めて普通の経済判断になっている。
NTT西日本 山口支店も2021年に終了
企業では、NTT西日本 山口支店も2021年4月末でエコキャップ回収リサイクル活動を終了している。
同社は、
- プラスチック製品の使用を控える社会的な流れ
- コロナ禍による社会活動の低下
- 山口県内にJCVへ寄付する回収会社がなくなったこと
を理由として挙げている。
NTT西日本 山口支店「エコキャップ回収リサイクル活動終了のお知らせ」
「やめた=環境意識が低い」ではない
これらの事例で重要なのは、単に面倒になったからやめた、という話ではないことだ。
| 企業・団体 | 終了時期 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 株式会社サンプロ | 2025年7月 | 寄付効率が非常に低い。労力をより効果的な社会貢献へ |
| 山形県三川町 | 2024年2月 | 通常のプラ再資源化ルート整備、買取価格低下、運送料増 |
| 北海道苫小牧市 | 2026年2月 | 通常のプラ再資源化ルート整備、CO2排出抑制 |
| 紀の川市社会福祉協議会 | 2024年9月 | 買取価格低下、運送料増 |
| NTT西日本 山口支店 | 2021年4月 | プラ削減の社会動向、回収環境の変化 |
特にサンプロの判断は分かりやすい。
「善意で続けてきた。しかし、効率が非常に低いので、もっと効果のある活動に資源と労力を回す。」
これこそ本来のSDGsっぽい判断にも見える。
SDGsだからこそ、効率の悪いエコキャップをやめる会社。
どちらが本当に「持続可能」なのか。
少なくとも後者は、一度は電卓を叩いている。
10.それでも全国で集めれば、大きな額にはなる
ここも公平に書いておきたい。
JCVによれば、2025年までのキャップ回収による支援実績は、ポリオワクチン換算で約2,457万5,783人分に達している。
一個一個は小さくても、全国規模で長年積み上げれば大きな支援になる。
だから、エコキャップ活動が「何の意味もない」とまで言う必要はない。
ただし、それと、
は別問題である。
11.結局、一番すごいのは「やってる感」かもしれない
10円を募金しても、会社の玄関は何も変わらない。
100円をネットで寄付しても、写真に撮るものがない。
しかし透明な回収BOXに数千個のキャップが入ると、非常に分かりやすい。
「社会貢献しています!」
「SDGsに取り組んでいます!」
と写真付きで紹介できる。
透明なBOXいっぱい。
見た目は壮大。
全国平均の寄付額換算、約56円。
この「見た目と金額のギャップ」こそ、エコキャップ活動で一番興味深いところかもしれない。
12.まとめ――やるなら目的をはっきりさせればいい
| 目的 | エコキャップ活動との相性 |
|---|---|
| ワクチン支援を効率よく行う | 直接寄付の方が圧倒的に簡単 |
| プラスチックを再資源化する | 意味はある |
| 学校などで環境教育を行う | 意味はある |
| 社員参加型の社会貢献活動にする | 参加しやすく見える化しやすい |
| 「集めれば自動的に地球にいい」と考える | 回収・輸送条件まで見ないと分からない |
エコキャップを集めるな、という話ではない。
ただ、回収箱の横に、
と一緒に書いておけばいいと思う。
その数字を見た上で、それでも集めるなら集めればいい。
直接100円寄付するなら、それでもいい。
自治体のプラスチック資源回収へ出すなら、それでもいい。
大事なのは、
「エコと書いてあるからエコ」「SDGsと書いてあるから社会貢献」で思考停止しないこと。
キャップ1,000個を集める前に、まず電卓を一回叩く。
たぶん、それくらいが一番環境に優しい。
主な出典・裏付け
- 世界の子どもにワクチンを 日本委員会(JCV):2026年2月5日「ペットボトルキャップ回収ページをリニューアルしました」 ― 全国平均10円/kg、2kgでポリオワクチン1人分、累計支援実績など。
- JCV:ペットボトルキャップ回収 ― 約500個=1kg、45L袋=約7kg、回収・寄付の仕組み。
- JCV:ペットボトルキャップ回収専門BOX「SEVEN GOALS」 ― 55L、約2,800個、12,700円+税・送料。
- JCV:東京都の回収リサイクル業者一覧 ― 送料送り主負担で郵送可能な事業者の例。
- PETボトルリサイクル推進協議会:PETボトルQ&A ― キャップは主にPP・PE。
- 環境省:プラスチック製容器包装の再商品化に伴う環境負荷の削減効果 ― LCAによる評価。
- テレビ朝日:2015年4月10日「ペットボトルキャップでワクチン、寄付してなかった」 ― 過去のエコキャップ推進協会の寄付停止問題。
- 株式会社サンプロ:エコキャップ回収活動終了のご報告と御礼 ― 「寄付に繋がる効率が非常に低い」と明記。
- 山形県三川町:ペットボトルキャップの回収を終了しました ― 再資源化ルート整備、買取価格低下、運送料増。
- 北海道苫小牧市:ペットボトルのキャップ回収を終了 ― 通常の再資源化ルートとCO2排出抑制を勘案。
- 紀の川市社会福祉協議会:福祉きのかわ 第224号 ― 買取価格低下、輸送費増などで終了。
- NTT西日本 山口支店:エコキャップ回収リサイクル活動終了のお知らせ
※寄付額は回収リサイクル業者によって異なるため、本記事ではJCVが公表する全国平均10円/kgを用いて計算しています。BOX価格と1回の満杯時の寄付額は目的・期間が異なるため、単純な費用対効果の比較ではありません。
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