外国人労働者・人手不足・ベトナムの労働力輸出
外国人労働者257万人。
「人手不足」は、本当に人が足りないからなのか
3本の動画を続けて見ていると、日本の外国人労働者問題は単なる「移民の賛否」ではなく、 日本企業の賃金、生産性、省力化、そして送り出し国側の事情まで含めて見ないと分からないと感じた。
日本では「人手不足だから外国人労働者が必要」という話をよく聞く。 建設、外食、介護、製造業など、人を集めにくい業界が増えているのは事実だ。
ただ、本当に単純に「人が足りない」のだろうか。 それとも、今の賃金や働き方では日本人が集まりにくく、その不足分を海外から補っている面もあるのだろうか。
日本の外国人労働者は257万人
厚生労働省によると、2025年10月末の外国人労働者は 257万1,037人。 2008年の48万6,398人と比べると、17年間で5倍を超えた。
国籍別ではベトナムが60万5,906人で最多。 中国43万1,949人、フィリピン26万869人と続く。 つまり現在、日本で働く外国人で最も多いのは中国人ではなくベトナム人だ。
ベトナムは単に「海外へ働きに行く人が多い国」ではない。 国として海外就労者を継続的に送り出す仕組みを整えている、代表的な「労働力輸出国」でもある。
かなり乱暴な言い方をすれば、 人材を一つの「輸出資源」のように活用している国とも言える。 もちろん人そのものを売っているわけではない。 実際には、政府が制度を整え、送り出し企業を管理し、外国との労働協定を結び、 自国民を海外就労へ送り出す仕組みである。
しかもベトナム政府系サイトは、この政策を英語で “manpower export” と表現している。 日本語にすれば、そのまま「労働力輸出」「人材輸出」に近い。
ベトナムは年間14万人以上を海外へ送り出している
ベトナム政府系の発表によると、2025年に海外就労へ出たベトナム人は 14万4,345人。 最大の送り出し先は日本で約6万4,600人、次が台湾で5万7,000人超、 韓国が1万1,600人超だった。
約6.46万人
5.7万人超
1.16万人超
また、別のベトナム政府系資料では、40か国・地域で 80万人を超えるベトナム人が海外就労しており、 海外からの送金は年間約50億ドル規模とされている。
これを見ると、海外就労は単なる個人の出稼ぎではない。 国内の雇用対策であると同時に、海外から所得を持ち帰る仕組みとしてかなり大きな存在になっている。
海外就労者は「余った労働力」ではなく、海外で所得を得て国内へ資金を戻す重要な存在でもある。 日本側の「人手不足」と、ベトナム側の「海外就労政策」がうまく噛み合って、 現在の大きな人の流れができている。
中国からベトナム、そして次の国へ
2本目の動画で印象的だったのが、この20年ほどで日本に来る外国人労働者の国籍が大きく変わってきたという話だ。
以前は中国人労働者の存在感が大きかったが、その後ベトナムが急増した。 さらに最近では、ミャンマー、インドネシア、スリランカなどの増加率が大きい。
動画ではこれを「安い国スライド」と表現していた。 これは公的な用語ではないが、賃金格差の大きい国から労働者を受け入れ、 その国の所得水準が上がると別の国へ供給元が広がっていく、という見方は興味深い。
「日本人を雇うしかない」で見えたもの
3本目の動画では、日高屋をめぐる「日本人を雇うしかない」という発言が取り上げられている。
ここで注意したいのは、 特定技能の外国人なら日本人より低い賃金で雇ってよい、という制度ではないことだ。 特定技能では、同じ仕事をする日本人と同等以上の報酬が必要とされている。
ただし問題は別のところにある。 現在の賃金や勤務条件でも海外から人材を確保し続けられるのであれば、 企業が賃金をもっと上げたり、省力化設備に投資したり、 仕事そのものを減らしたりする圧力が弱くなる可能性はある。
外国人労働者の受け入れは、この中の一つの選択肢にすぎない。 しかし日本はすでに257万人という規模までこの選択肢を使っている。
ベトナム人の「帰国希望」と罰金報道
1本目の動画では、日本に不法残留しているベトナム人の帰国希望が増えているという話と、 ベトナム側の罰金制度が取り上げられている。
ここはニュースだけを見ると「罰金が約10倍になった」と理解しやすいが、 ベトナムの法令を確認すると注意が必要だ。
2026年の政令283号では、契約終了後に正当な理由なく海外に不法残留した労働者に 8,000万~1億ドンの罰金が規定されている。 ところが2022年の政令12号にも、同じ8,000万~1億ドンの罰金規定が確認できる。
「2026年に罰金が突然10倍になったから帰国ラッシュが起きた」と単純に説明するのは、 法令の経緯を見る限り慎重になった方がいい。 新しい政令が出たことと、罰金額そのものが新たに10倍になったことは別問題である。
日本はこれからも「次の国」を探し続けるのか
この3本を続けて見ると、一番気になるのはここだ。
中国からベトナムへ。 そしてベトナムから、ミャンマー、インドネシアなどへ。
もし日本の人手不足対策が、より賃金差の大きい国から働き手を探すことに依存しているのなら、 相手国が経済成長するたびに「次の国」を探すことになる。
一方で送り出し国側にも事情がある。 ベトナムのように、海外就労そのものを制度化し、 雇用政策や海外からの送金につなげている国もある。
つまり日本だけの都合で外国人が来ているわけではなく、 「人手が欲しい国」と「労働力を海外へ送り出したい国」の利害が一致して成立している市場 と見る方が実態に近い。
だからこそ考えるべきなのは、外国人を入れるか入れないかだけではない。
日本の人手不足を、これから何で解決するのか。
外国人労働者なのか。
賃上げなのか。
労働環境の改善なのか。
機械化・ロボット・AIなのか。
あるいは、人が減った社会に合わせて仕事や企業そのものを減らしていくのか。
外国人労働者257万人という数字を見ると、 日本はすでに海外からの労働力にかなり大きく依存している。
この先さらに受け入れを増やすのであれば、 単に「人手不足だから」という説明だけでは足りない。 賃金、生産性、省力化、外国人本人の待遇、送り出し国の事情まで含めて、 その仕組み全体を見る必要があると思う。
参考にした3本の動画
主な資料
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厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68794.html -
ベトナム政府ポータル「Manpower export in 2025 exceeds preset goal」
https://en.baochinhphu.vn/manpower-export-in-2025-exceed-11-of-year-plan-111260108101305493.htm -
ベトナム政府ポータル「Viet Nam sends over 85,000 guest workers abroad in first seven months of 2025」
https://en.baochinhphu.vn/viet-nam-sends-over-85000-guest-workers-abroad-in-first-seven-months-of-2025-111250806163039756.htm -
ベトナム「海外就労契約労働者法」Law 69/2020/QH14
https://vbpl.moj.gov.vn/bocongthuong/Pages/vbpq-toanvan.aspx?ItemID=146643 -
ベトナム政令283/2026/NĐ-CP・政令12/2022/NĐ-CP(罰則規定の確認)
政令283/2026 / 政令12/2022
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