AIで事務仕事が減る中、障害者雇用をどう考えるか

測量・調査会社の障害者雇用を考える

測量・調査会社の障害者雇用を考える――制度上のメリットと、AIで変わる仕事の受け皿

制度の確認日:2026年9月6日

障害者雇用には、人材確保や業務改善につながるメリットがある。条件を満たせば助成金を利用でき、会社の規模によっては雇用率未達成に伴う納付金の負担も減る。一部の公共調達では雇用への取組が評価される場合もあるが、今回扱う測量・調査の委託業務に、石川県の建設工事向け加点は適用されない。

ただ、経営の立場で考えると、雇用すれば必ず利益が出るわけではない。担当する仕事、教育や支援にかかる時間、助成金が終わった後の費用まで考える必要がある。

さらに気になるのが、AIによる仕事の変化だ。これまで障害者雇用の候補として挙げられてきたデータ入力、経理補助、営業事務などは、今後も同じ人数分の仕事が残るのだろうか。

今回は、測量・建設コンサルタント・環境調査を主力とする会社を対象に、制度とメリットを整理したうえで、「従業員99名以下」と「従業員100~200名」の2つの規模で考える。特定の企業の社員数や雇用状況を示すものではない。

1.まず、障害者雇用にはどのようなメリットがあるか

障害者雇用の効果は、助成金だけではない。仕事内容と本人の適性が合い、必要な配慮が整っていれば、次のような効果が期待できる。

メリット 測量・調査会社で考えられる効果
採用対象が広がる CAD・GIS、分析、経理などの技能を持つ人も含め、新しい人材と接点を持てる
技術者の負担を減らせる 調査準備や資料管理などを分担し、技術者が専門業務に使える時間を増やせる
業務手順が明確になる 口頭だけだった指示を、手順書や見本として整理する機会になる
作業品質を見直せる 完了条件や確認項目を明確にし、手戻りを減らせる可能性がある
属人化を減らせる 特定の社員しか知らない作業や保存方法を共有できる
働き方を見直せる 短時間勤務、静かな作業場所、在宅でできる内業などを検討できる
既存社員の雇用継続に役立つ 病気やけがで従来の仕事が難しくなった社員の配置転換にも経験を生かせる
技能の蓄積につながる 適性に合う仕事を継続し、本人の経験や専門性を育てられる
法定雇用率への対応が進む 必要な雇用数の確保と定着を計画的に進められる
納付金の負担が減る場合がある 100人を超える会社が不足数を減らした場合に金銭的な効果がある
助成制度を利用できる場合がある 採用や作業設備、職場定着などの支援を受けられる
対外的な説明材料になる 採用活動や取引先への説明で、実際の取組を示せる
一部の入札制度で評価される 発注者・契約区分・要件に合う場合に限る。今回の測量・調査の委託業務には、石川県の建設工事向け加点は適用されない

もちろん、これらは採用しただけで自動的に得られるものではない。受入れ担当者に仕事が集中すれば、技術者の負担が逆に増えることもある。仕事内容と支援体制を具体化することが前提になる。

2.何人の会社なら、何人雇う必要があるか

2026年7月から、民間企業の法定雇用率は 2.7% になった。制度上の算定対象となる従業員数が 37.5人以上 の事業主には、障害者を一定数雇用する義務がある。厚生労働省:障害者雇用率制度

必要な雇用数は、原則として算定対象の従業員数に2.7%を掛け、小数点以下を切り捨てて求める。下表は、全員が週30時間以上勤務し、除外率の適用がない場合の整数人数の例だ。

算定対象の従業員数 必要な雇用数・算定上
37人以下 0人分
38~74人 1人分
75~111人 2人分
112~148人 3人分
149~185人 4人分
186~200人 5人分

実際には短時間勤務者を含むため、37.5人などの数値になる。従業員側では週20時間以上30時間未満を原則0.5人として算定する。一方、障害者側の算定は、障害の区分・程度と勤務時間によって0.5人、1人、2人などに分かれ、精神障害者の短時間勤務等には特例もある。厚生労働省:障害者雇用のご案内

つまり「必要数が4人分」でも、必ず4人を新規採用するという意味ではない。既に雇用している算定対象者も含めて確認する。会社案内の社員数だけでは、正確な必要数は分からない。

この記事のモデルは、測量・調査・コンサルタント業務を主力とし、除外率なしで考える。建設業許可を持つだけで、建設業の除外率を会社全体に自動適用できるわけではない。

また、法定雇用義務の対象人数に満たない会社にも、障害者差別の禁止と、過重な負担にならない範囲での合理的配慮の提供義務がある。必要な配慮は本人と話し合い、実際の仕事に即して決める。厚生労働省:差別禁止・合理的配慮

3.納付金・調整金・報奨金は、それぞれ条件が違う

ここで注意したいのは、金銭負担の境目が「100人以上」ではなく、**「100人を超える会社」**であることだ。100人ちょうどは、納付金の対象外になる。

制度 主な対象 基本となる金額
障害者雇用納付金 常用労働者が100人を超え、必要な雇用数に不足する事業主 不足1人分につき月5万円を納付
障害者雇用調整金 100人を超え、必要数を上回って雇用する事業主 超過1人分につき原則月2万9,000円を支給
報奨金 100人以下で、別の高い雇用基準を超える事業主 基準超過分につき原則月2万1,000円を支給

申告・申請が必要で、月ごとの人数などで算定する。調整金は年間120人月、報奨金は年間420人月を超える支給対象分で単価が下がる。JEED:納付金制度Q&A

100人以下の報奨金は、法定雇用率を達成しただけでは支給されない。年間の障害者算定数が「各月の従業員数の4%を年間合計した数」と「72人月」の大きい方を超える必要がある。必要数が1~2人分の会社がその人数を満たしても、それだけでは対象にならない。JEED:納付金制度の概要

100人を超える会社では、不足数を1人分減らした状態が12か月続けば、納付金は年60万円減る。ただし、同じ1人分で納付金の年60万円削減と、調整金の年34万8,000円受給を二重に見込むことはできない。必要数に達するまでの雇用と、必要数を超える雇用は別の扱いだ。

なお、納付金を払えば雇用義務がなくなるわけではない。100人以下でも、雇用義務の対象であれば必要数への対応は求められる。

4.採用時の助成金には、どのようなものがあるか

代表例が「特定求職者雇用開発助成金・特定就職困難者コース」だ。中小企業に該当する場合の主な額は次のとおり。

対象者の区分 週所定労働時間 1人当たりの支給総額 支給期間
次の区分に該当しない身体・知的障害者 30時間以上 120万円 2年間
重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者、精神障害者 30時間以上 240万円 3年間
身体・知的・精神障害者の短時間労働者 20時間以上30時間未満 80万円 2年間

これは期間全体の総額であり、毎年同額を受け取れるという意味ではない。対象となるハローワーク等からの紹介、継続雇用の見込み、賃金支払いなどの要件がある。直接応募など採用経路によって対象外になる場合もあるため、募集・紹介の段階で確認する必要がある。厚生労働省:特定就職困難者コース

中小企業かどうかは、制度ごとの業種・資本金・従業員数の基準で判断する。「100人を超えたから助成金でも大企業」とは限らない。

このほか、作業施設・支援機器等の助成、障害者トライアル雇用、職業センターによる職務設計や定着への支援などもある。ただし、対象経費や併給条件が異なるため、すべてを単純に足し合わせることはできない。JEED:助成金厚生労働省:障害者トライアル雇用石川障害者職業センター

5.入札で有利になるという話は、どこまで当てはまるか

石川県には、県内に主たる営業所を置く建設業者向けに、建設工事の入札参加資格に関する主観的事項審査がある。障害者雇用では、雇用義務のある企業が法定雇用率を達成している場合などに10点の加点が定められている。雇用義務がない企業にも、所定の基準日に1人以上雇用する場合の評価がある。石川県:主観的事項審査評価基準

ただし、障害者1人につき10点ではなく、個別の入札で必ず技術点が10点上がるわけでもない。建設工事の資格審査上の評価であり、落札を保証する制度ではない。

今回のモデルでは、入札加点によるメリットは見込まない。

ここで紹介した10点の加点は、石川県の「建設工事」の入札参加資格・格付けに関する制度だ。県の公式案内でも、測量・建設コンサルタント等の業務に係る入札参加資格のみを申請している場合は、主観的事項審査の対象外と明記されている。

そのため、測量・建設コンサルタント・環境調査などの委託業務を主力とする今回のモデルでは、「障害者を雇えば、この加点で普段の入札が有利になる」とは言えない。建設業許可を持っていても、この建設工事向け加点が委託業務の入札へ移るわけではない。

実際に県の建設工事の入札参加資格を持ち、その格付けで評価を受ける場合には関係するが、工事受注を想定しない今回の比較では直接のメリットに含めない。石川県の公式説明

これは、あらゆる発注者の入札で障害者雇用が評価されないという意味ではない。他の発注者や別制度については個別の基準による。この記事では、確認した石川県の建設工事向け加点と、今回の委託業務のモデルを区別している。

6.モデルA:従業員99名以下の測量・コンサルタント会社

この規模では、算定人数に応じて雇用義務なし、1人分、2人分に分かれる。納付金の対象にはならないため、採用による納付金削減効果はない。

メリットとしては、本人に合った仕事を分担し、技術者の時間を専門業務へ振り向けられる可能性がある。CAD・GISなどの技能があれば、補助職に限らず技術職としての採用も考えられる。助成金が利用できれば、採用初期の費用負担を一部補える。

一方、専任の人事担当者がいない会社では、教育や相談対応が特定の管理職に集中しやすい。繁忙期だけ仕事が多く、年間を通じた内業が少ない会社では、継続して担当できる仕事を確保する難しさもある。

この規模で「助成金が出るから採用すれば得」と考えるのは無理がある。法定数を満たしても通常はそれだけで報奨金が出るわけではなく、給与と受入れ費用は継続する。本人の成果と、既存社員の負担がどれだけ減るかが経営上の重要な点になる。

7.モデルB:従業員100~200名の測量・調査会社

この規模では、上の単純化した条件なら必要数は2~5人分になる。ただし、100人ちょうどは納付金の対象外で、100人を超える場合に不足数に応じた納付金が発生する。

メリットは、不足がある会社なら採用による納付金削減を金額で把握できることだ。また、複数部署から仕事を整理できれば、技術、分析、機材管理、総務など、本人に合う配置を探せる可能性がある。

一方で、複数人分の仕事と支援体制が必要になる。人数が多い会社でも、各部署が忙しく、誰も教育時間を取れないなら受入れは難しい。配置先だけ決めて支援を現場任せにすると、既存社員の負担が増えてしまう。

環境調査では、不整地への移動、長距離運転、暑熱下の作業、薬品の取扱いなどもある。担当できるかは障害名だけで決めず、本人の技能と実際の作業条件、必要な配慮から判断する。

採用1人分の費用で比較すると

会社全体の特定の人数を置かず、採用1人分で考えてみる。年間雇用費を、給与・会社負担の社会保険料等を含めて仮に300万円とする。これは相場ではなく比較用の仮定だ。

助成金は「120万円を2年間」の区分に該当し、全額支給されると仮定する。100人を超える会社では、採用によって不足が1人分減り、その状態が12か月続くものとする。

年額の比較 99名以下の会社 100人を超え200人以下の会社・不足1人分を解消
増える雇用費 300万円 300万円
助成金・最初の2年間の年平均 ▲60万円 ▲60万円
納付金の削減 0円 ▲60万円
採用前と比べた追加負担 240万円 180万円
助成金終了後の追加負担 300万円 240万円

100人ちょうどの会社は、この比較では左列と同じく納付金削減なしで考える。金額は年度途中の制度変更や人数変動のない通年比較で、実際の助成金入金時期とは異なる。教育・設備等の追加費用と、採用者が生む利益は含めていない。

100人を超える会社は金銭面の効果を得やすい場合があるが、それでも雇用費の多くは残る。助成金の終了後まで考え、本人の成果や、技術者が専門業務に使えるようになる時間を評価する必要がある。これは雇用義務を費用次第で免れるという意味ではなく、必要な雇用を持続できる形にするための検討だ。

8.ソフト導入の先に、AIによる省力化がある

ここからが、今後の雇用を考えるうえで気になる点だ。

給与計算や経理には既にソフトがある。ただ、多くの作業では、その前後に「資料を読む」「入力する」「不備を問い合わせる」「別のシステムへ転記する」といった人の仕事が残っている。

そこにAIと自動化を加えれば、単なる計算の自動化から、前後の事務処理まで省力化できる可能性がある。文書の読取り・分類・照会文の作成はAI、決まった計算や条件判定は専用ソフト、データの受渡しや通知はPower Automateなどを使う構成だ。Microsoft:Power AutomateAI Builderとの組合せ

これは、既にすべての会社で実現しているという話ではない。自社規程の整理、データの統一、連携の設定、例外処理の設計を進めれば、さらに人手を減らせる余地があるということだ。

9.営業事務――入札情報の収集や価格の整理はどう変わるか

従来の仕事 自動化する具体例
発注者のサイトを毎朝確認 配信メール、公開データ、取得可能なページから更新を収集する
対象案件を探す 測量、地質、環境、砂防などの条件で候補を分類する
案件一覧へ転記 案件名、業務場所、期限、参加条件を抽出して台帳へ登録する
営業担当へ連絡 部署ごとに候補案件と原文リンクを通知する
期限を管理 申請期限前に通知し、未処理案件を一覧にする
落札結果を整理 公開結果を案件台帳にひも付け、価格や落札率を集計する

実装時には、二重登録、訂正公告、取消し、サイト変更を扱う必要がある。取得に失敗したのに「案件なし」と処理しない仕組みも必要だ。安定すれば、担当者がすべてのページを開いて同じ情報を手入力する作業は大きく減る。

「底値」の整理も、最低制限価格、過去の落札価格、自社の採算下限に分ければ自動化を考えやすい。

価格の種類 できることと限界
最低制限価格 適用される公式算定式と必要な内訳が分かれば計算できる。非公開の内訳などが必要なら確定できない
過去の落札価格・落札率 公開情報を集計できる。ただし、業務量や年度が違う案件の単純比較には限界がある
自社の採算下限 人工、外注費、旅費、機材費、管理費等から計算できる。現地条件や追加作業の見込みは別途判断する

石川県も業務区分別の最低制限価格の算定方法を公表している。適用時期、業務区分、端数処理を確認して計算式にすれば、毎回人が電卓で計算する必要はない。ただしAIが非公開価格を確定できるわけではなく、過去の落札率も次回の落札額を保証しない。石川県:最低制限価格の算定方法

参加条件の解釈、配置技術者の調整、受注するかどうかの判断は残る。それでも、情報収集・転記・集計が自動化されれば、営業事務に必要な人数が減る可能性はある。

10.経費精算――入力だけでなく、確認作業も減る可能性がある

「楽楽精算」には、領収書のAI-OCR読取り、交通系ICカード取込み、申請ルール違反のチェック、自動仕訳・会計ソフト連携がある。こうした機能だけでも、日付や金額を何度も入力する作業を減らせる。楽楽精算公式

さらに、AIによる文書処理やPower Automateによる連携を組み合わせれば、次のような運用を検討できる。個別製品の標準機能だけで全部できるという意味ではなく、システム全体の構成案だ。

  1. 領収書から日付・支払先・金額を読み取る。
  2. 社員番号と業務番号から、所属や原価の計上先を設定する。
  3. 宿泊上限や必須添付など、明確な社内規程を条件式で確認する。
  4. 情報不足の申請を抽出し、問い合わせ文の作成や通知を自動化する。
  5. 承認済みデータを会計・原価管理システムへ取り込む。

例えば、宿泊上限が1泊1万円なら、9,800円と12,000円の振分けは条件式でできる。AIは説明文の整理などを補い、特別承認が必要な申請を担当者が扱う。上限内であっても、業務上妥当な支出かまで自動的に証明できるわけではない。

なお、楽楽精算の公式FAQには、申請レビューAIなどを提供予定・開発中とする案内もある。既存機能と予定機能を区別し、利用できる範囲を確認する必要がある。ラクス:AIによる承認業務の自動化

確認が残るとしても、全件を一から読む運用から、例外を中心に扱う運用へ移れば、必要な工数は減る。「経理には確認が必要だから、今と同じ人数が必要」とは言い切れない。

11.勤怠・給与計算――ソフト同士をつなぎ、その前後をAIで補う

入退室・打刻システムで記録を取り、勤怠ソフトで集計し、確定したデータを給与ソフトへ渡す。正しい勤務・給与条件が設定されていれば、通常月の定型的な集計・計算・転記はほぼ自動化する構成が考えられる。実際に、勤怠確定後の給与連携を提供する製品もある。OBC:勤怠管理と給与連携アマノ:入退室・出退勤の管理

工程 自動化の内容
出退勤の記録 カード、顔認証、PC、スマートフォンなどで記録する
勤怠集計 勤務、時間外、深夜、休日労働、休暇を設定に従って集計する
不備の抽出 打刻忘れ、未承認、記録の不整合を通知する
給与計算 確定勤怠を取り込み、基本給・手当・残業代・控除を計算する
支払準備 明細・振込データを作成し、担当者が最終確認・承認する

さらにAIを加えれば、社内規程に基づく問い合わせ回答の下書き、変更届の情報抽出、不備の説明、操作案内なども省力化の候補になる。給与や年末調整の計算自体は専用ソフトを使い、その前後に残る手作業を減らす考え方だ。

一方、入室時刻と勤務開始時刻は必ずしも一致しない。測量・調査会社では、直行直帰、出張、早朝の機材準備もある。入退室記録と申告時間に著しい差があれば実態確認が必要で、残業申請がないという理由だけで実際の労働時間を切り捨てることはできない。厚生労働省:労働時間の適正把握ガイドライン

昇給、入退社、保険・税情報の変更なども、正しい内容を反映する必要がある。ただ、こうした判断や変更が残ることと、全員分の集計・転記を人が続ける必要があることは別だ。担当者の仕事は、計算から設定・変更点・例外の確認へ移っていく。

12.従来3人の仕事を1人で回すことはあり得るか

入力、転記、定型チェックが大半なら、検討する価値はある。ただし、次の表は成立条件を考えるための仮定で、実測値や導入効果の保証ではない。

3人がそれぞれ月160時間、合計480時間を対象業務に使っているとする。

業務 自動化前・月 自動化後・月の仮定
入札情報収集・台帳登録 80時間 10時間
落札価格の整理・定型営業書類 80時間 15時間
経費精算・会計への転記 120時間 20時間
勤怠集計・給与データの受渡し 80時間 15時間
定型チェック・不備連絡 80時間 20時間
個別照会・例外処理 40時間 40時間
自動化の監視・保守・設定更新 0時間 25時間
合計 480時間 145時間

この仮定なら約70%の削減で、計算上は1人分の月160時間以内になる。ただし、定型業務440時間を80時間まで減らせるという強い前提だ。削減が月100時間にとどまれば、残り380時間となり1人では回らない。

月145時間でも、余裕は15時間しかない。月末の集中、休暇、システム停止に備える代替担当者が必要になる。支払いや重要な判断を別担当者が承認する体制も残し、その工数が増えれば会社全体の計算に加える。社員や外部業者に作業を移しただけなら、その時間も含める。

ソフト利用料、AI処理料、連携の構築・保守費用も発生する。APIやCSV連携を優先し、画面操作を自動化する場合は、画面変更や処理停止、二重登録への対応が必要だ。

実際に判断するには、処理件数、1件当たりの時間、例外率、修正・保守時間を導入前後で測る。空いた時間を専門業務へ回すのか、増員を見送るのかでも効果は変わる。工数が減っただけで、その月から給与支出が減るわけではない。

13.事務仕事が減る中で、障害者雇用の受け皿は残るのか

ここが、今回考えたい一番の問題だ。

障害者雇用の候補として、データ入力、給与入力、経理補助、営業事務を挙げることはできる。しかし、その仕事自体が減るなら、現在の作業量を前提に採用計画を立てるのは難しい。

「最後は人が確認する」という説明も、それだけで雇用の受け皿が残る根拠にはならない。従来3人の仕事をAIを使う1人が確認できるようになれば、必要人数は減る。残る例外処理や判断には知識が必要で、簡単な入力業務から始められる仕事は、かえって少なくなる可能性がある。

ILOも事務職は生成AIの影響を受けやすいと分析している。ただし、これは事務職がすべてなくなるという予測ではない。仕事内容が変わる可能性を示すもので、実際の雇用への影響は導入や業務量にも左右される。ILO:生成AIと職業への影響

もちろん、障害のある人が事務補助しかできないわけではない。CAD・GIS、分析、会計、プログラミングなどの専門技能を持つ人も、AIを使って成果を出せる人もいる。一方で、そうした仕事には技能や教育が必要であり、単純入力の代わりに誰でもすぐ担当できるとは限らない。

99名以下の会社でも、100~200名の会社でも、「今ある簡単な事務作業を切り出せば雇用できる」という前提は見直す必要がある。自動化後に残る業務量と必要な技能を整理してから、本人との適合や育成方法を考えることになる。

14.今後も需要が残りやすいのは、現場で動ける人ではないか

一方、測量や環境調査には、現地へ行き、機材を運び、設置し、試料を採り、その場の状況を確認する仕事がある。暑い中で屋外を歩き、身体を動かす作業もある。

ドローンやロボットで省力化できる部分はあっても、条件が毎回異なる現場の作業を、事務処理と同じように自動化できるとは限らない。地形、足場、天候、機材の状態を見て、その場で動く必要があるからだ。

私は、今後もこうした現場で身体を使い、状況を見て動ける人材への需要は残りやすいと考える。いわゆるブルーカラーの仕事でも、体力だけでなく、技能や現場判断を持つ人の価値は大きい。暑さへの対策や働く条件の改善も、人を確保するうえで欠かせない。

ただし、事務の仕事が減るから、障害のある人を屋外作業に配置すればよいという話にはならない。本人の技能、体力、障害の特性に合う仕事かを個別に考える必要がある。

障害者雇用の難しさは、ここにある。事務の定型作業は減る可能性がある一方で、現場で不足する人材と、採用する人の適性が必ずしも一致するわけではない。助成金や納付金削減だけでは、この違いは解消できない。

これからは「今ある簡単な仕事」ではなく、「自動化が進んでも会社に必要な仕事」を基準に、採用と育成を考える必要がある。その中で、実際の現場で動ける人を確保し、育てることは、測量・調査会社にとって今後も重要になると思う。

出典・参考資料

本文の制度説明・金額・サービス機能・AIと仕事の関係について、以下の公的機関・提供元の情報を参照しました。制度や製品の内容は変更されることがあるため、実際に利用・申請する際は最新情報を確認してください。

  1. 厚生労働省:障害者雇用率制度
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html
  2. 厚生労働省:障害者雇用のご案内
    https://www.mhlw.go.jp/content/000767582.pdf
  3. 厚生労働省:差別禁止・合理的配慮
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html
  4. JEED:納付金制度Q&A
    https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_Q_A.html
  5. JEED:納付金制度の概要
    https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html
  6. 厚生労働省:特定就職困難者コース
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html
  7. JEED:助成金
    https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/index.html
  8. 厚生労働省:障害者トライアル雇用
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html
  9. 石川障害者職業センター
    https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/ishikawa/
  10. 石川県:主観的事項審査
    https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kanri/syukanntenn.html
  11. 評価基準
    https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kanri/documents/r841shukanten_youryou.pdf
  12. Microsoft:Power Automate
    https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-automate/
  13. AI Builderとの組合せ
    https://learn.microsoft.com/ja-jp/ai-builder/use-in-flow-overview
  14. 石川県:最低制限価格の算定方法
    https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kanri/documents/itakusaiteiseigen.pdf
  15. 楽楽精算公式
    https://www.rakus.co.jp/rakurakucloud/seisan/
  16. ラクス:AIによる承認業務の自動化
    https://www.rakus.co.jp/rakurakucloud/seisan/faq/function/ai-approval-automation.php
  17. OBC:勤怠管理と給与連携
    https://www.obc.co.jp/bugyo-edge/attend
  18. アマノ:入退室・出退勤の管理
    https://www.amano.co.jp/tis/line-up/system-timeclock/
  19. 厚生労働省:労働時間の適正把握ガイドライン
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf
  20. ILO:生成AIと職業への影響
    https://www.ilo.org/publications/generative-ai-and-jobs-refined-global-index-occupational-exposure

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